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谷査恵子氏(元昭恵氏付職員)の「昭恵氏の指示なかった」はノンキャリ国家公務員の仕事おとしめるもの

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 3月28日に配信された朝日新聞デジタルの記事です。

昭恵氏付の職員だった谷氏、指示や関与を否定朝日新聞2018年3月28日09時24分

 学校法人・森友学園をめぐる国有地の取引問題で、安倍晋三首相の妻の昭恵氏付の職員だった谷査恵子・在イタリア日本大使館1等書記官が27日、同大使館が管轄するマルタで朝日新聞の取材に応じ、昭恵氏の指示や関与を否定した。

 谷氏は2015年秋、取引について財務省に問い合わせ、学園前理事長の籠池泰典被告=詐欺罪などで起訴=にファクスで回答していた。回答には「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」と記されていた。この表現について、谷氏は「(籠池前理事長が)夫人と直接やりとりされているような方だったのでそのように書いたのであり、意味はない」と説明。問い合わせが昭恵氏の指示によるかについて「いろいろ言われているが、そういうことはない」と述べた。

 こうした問い合わせが取引に影響したかについて、谷氏は「なかった」と否定。野党側が谷氏の証人喚問を求めていることに対しては「(国会に)出るかどうかは自分で決められることではない」と語った。



 この報道について、経済産業省の仲間でつくる全経済産業労働組合副委員長の飯塚盛康さんが谷さんに宛てた手紙を書いてくれたので以下紹介します。

谷査恵子さんへ

 昨年3月23日、籠池泰典氏が証人喚問で安倍昭恵付職員の谷さんからFAXをいただいたと発言しましたが、その翌日、国会で菅官房長官は谷さん個人が行ったものだと答弁しました。

 私は3月25日のFacebookに、国家公務員が昭恵氏や上司の指示も受けずにこのようなことを行うはずはなく、昭恵氏も菅官房長官も谷さん個人に責任を負わせることに元経済産業省の職員として腸が煮えくり返る思いだと書いたところ、昭恵氏ご本人から「谷さんに責任を負わせようなどということは勿論思っていません。こんなことに巻き込むことになってしまい申し訳ないと思っています」というメッセージが来ました。

 しかし、その後昭恵氏はそのことについて何の説明もしていません。また、政府も質問趣意書に上司に相談もなかったと回答するなど、徹底的に谷さんが個人的に行ったことだとしてきました。

 国家公務員は入省すれば組織の一員として、上司などに判断を仰ぎ、決して個人の判断で業務を行ってはいけないと教えられてきました。少なくとも、あなたや私がいた経済産業省ではそう教えてきました。

 FAXの回答に「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」と書いたことに「(籠池前理事長が)夫人と直接やりとりされているような方だったのでそのように書いたのであり、意味はない」と言ったそうですが、あなたは相手に手渡す文書に意味がない文章を入れるのですか? この文書を受け取った籠池氏が昭恵氏もこの案件について承知していたと受け取ると考えなかったのですか? 文書を書くという重さを教えられなかったのですか?

 あなたは問い合わせについても昭恵氏の指示を否定していますが、あなたは20年近く仕事をしていて、上司が直接やりとりをしている人からの問い合わせについて、個人の判断で他省庁に問い合わせたことがあるのですか?

 あなたは直接の上司である昭恵氏にも、職責上の上司である室長にも相談せず、指示も受けないでやったということですか?

 3月27日の証人喚問で佐川宣寿氏(前財務省理財局長)はFAXの件は谷さんが田村国有財産審理室長に電話で問い合わせし、電話で回答をもらったと言いました。あの回答内容を見れば文書でやりとりしたのは明らかですが、これは財務省が文書を出さないための答弁です。しかし、これによってあなたは上司(昭恵氏)が親しい人(籠池氏)だからということだけで個人的な判断で自分勝手に財務省の室長に電話で問い合わせをする職員ということになったのですが、それでいいのですか?

 また、あなたが籠池氏に送ったFAXには、「引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思いますので、何かございましたらご教示ください。」とも書いてあります。あなたの説明では昭恵氏の指示もなく、個人の判断でやったことになりますが、「当方としても見守ってまいりたい」とあなた個人が勝手な判断でこの森友案件を見守るとはどういうことなんでしょうか? 民間企業に置き換えると、その企業の役員でもなんでもない社長夫人がいて、その社長夫人の親しい人に対して、ヒラ社員が個人の判断で勝手に企業が所有する土地を格安で売ることを進めたことになります。民間企業においても考えられないことですが、国家行政を担う国家公務員のルールとしてもあり得ません。

 もし、あなたが国家公務員として最低のルールを犯してまで業務を行ったというのであれば、多くのノンキャリは上司に相談もせず、指示も受けず、個人の判断で仕事をするというレッテルを貼られることになりますよ。

 あなたは佐川氏と口を揃えたように「昭恵氏の指示はなかった」と言いますが、佐川氏はキャリアであなたはノンキャリという違いがあります。ノンキャリのあなたがこんなことを個人の判断で勝手にできないことは、国家公務員なら誰にだってわかることです。あなたがこんなウソをつき続けることは、キャリア官僚の下で、黙々と国民のための仕事をしたいと日々奮闘している何万人というノンキャリ国家公務員の「全体の奉仕者」としての誇りを傷つけ、国家公務員の仕事そのものをおとしめる行為だということは肝に銘じてください。

 一方で、ノンキャリ職員のあなたに国会で証言させることになれば、その重さにあなたがつぶされかねないと心配もしています。昭恵氏が「谷さんに責任を負わせるつもりはない」と言うのなら、昭恵氏自らが国会で証言すべきだと私は考えています。(全経済産業労働組合副委員長・飯塚盛康)

 


昭恵氏の下僕とされた谷査恵子氏、1億円超える国家公務員人件費を昭恵氏に注いだ安倍政権の前近代性

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 前回記事の「民間企業に置き換えると、その企業の役員でもなんでもない社長夫人がいて、その社長夫人の親しい人に対して、ヒラ社員が個人の判断で勝手に企業が所有する土地を格安で売ることを進めたことになります。民間企業においても考えられないことですが、国家行政を担う国家公務員のルールとしてもあり得ません。」という飯塚盛康さんの指摘で気づいたことがあります。それは、昭恵氏付職員を民間企業に置き換えると、その企業の役員でもなんでもない社長夫人に、その企業の職員を常勤で2人、非常勤で3人付けたことになるなということです。役員でない社長夫人に5人の職員を付ける民間企業って存在するのでしょうか?

 安倍政権はこの問題をどう説明しているのでしょうか?

 安倍政権は、安倍昭恵氏は「私人」だと閣議決定した上で、「安倍内閣総理大臣の夫人が内閣総理大臣の公務の遂行を補助すること(以下「総理公務補助」という。)を支援する職員2名を内閣官房に置いているほか、日常的には各省庁で勤務しているが、安倍内閣総理大臣の夫人の総理公務補助を必要に応じ支援する職員3名を内閣官房に併任させている。」と説明しています。そして、昭恵氏の行う「総理公務補助」として、「内閣総理大臣の外国出張への同行や、我が国に来訪する外国賓客の接遇、宮中晩餐会への出席のほか、内閣総理大臣の公務の遂行に関連する国内外の会議等への単独での出席等が挙げられる。」としています。

 昭恵氏が森友で行った講演に昭恵氏付職員が同行したことについては、これを「総理公務補助」と認めてしまうと、昭恵氏は安倍総理の公務の遂行を補助したことになり、森友問題の責任を安倍首相自身が問われることになります。なので、安倍政権は、昭恵氏が森友で講演したことは「私的行為」だが、それとは別に予定される「総理公務補助」について昭恵氏と「連絡調整」する「公務」のために昭恵氏職員は同行したと閣議決定しているのです。

 しかし、この理屈によると、どんな昭恵氏の「私的行為」にも「連絡調整」する「公務」のために昭恵氏付職員は同行することになります。こんなバカな話はないし、これでは昭恵氏の下僕に国家公務員が成り下がってしまうことになるのですが、スキー、田植え、バー、選挙応援などあらゆる昭恵氏の「私的行為」に実際に同行させられていたので、この現代において国家公務員は下僕化させられてしまったというのが事実になります。「私人」が国家公務員を下僕化したという安倍政権下の日本はおよそ近代国家とは言えないのではないでしょうか?

 

▼@mortal225さんのツイート


 安倍政権以前は、「総理夫人付職員」として非常勤で外務省職員を一人だけ付き、多くは外交時の「総理夫人による総理公務補助を支援する職員」として仕事をしていただけでした。

 安倍政権になって初めて「私人」の総理夫人に4年間に渡って国家公務員を常勤で2人、非常勤で3人も「昭恵氏付職員」として配置し、その人件費だけで1億1千万円もの税金を安倍政権はムダづかいしたのです。しかも、「昭恵氏付職員」の常勤として3年間仕事をした谷査恵子氏がキープレイヤーとなって森友問題が引き起こされたのです。(『文芸春秋』2017年3月号で、ノンフィクション作家の石井妙子氏は、昭恵氏に首相官邸でインタビューした際、おみやげとして昭恵氏のイラスト入りのメモやペン、キーホルダーなどをもらったことを明らかにしています。このインタビューに同席していた常勤の「昭恵氏職員」の人件費はもちろん、昭恵氏のイラスト入りのメモやペン、キーホルダーの作成費用にも私たちの税金が投入されているということではないでしょうか? ※菅義偉官房長官は昨年8月4日の記者会見で、5人いた昭恵氏職員について、経済産業省出身の常勤2人を同省に帰任させ外務省所属の非常勤3人だけとしたことを発表。その理由として「夫人との連絡調整を安倍事務所スタッフに委ねても支障がないと判断し、総合的に見直した」と菅官房長官は述べています)

 私は総理夫人に常勤の国家公務員を付ける必要などないと思いますが、百歩譲って必要性があったとしても、昭恵氏が行うのは「総理公務補助」で、谷査恵子氏の国家公務員としての職務は「昭恵氏が行う総理公務補助の支援」だけです。ですので、谷査恵子氏の「昭恵氏の指示なかった」はそもそもあり得ないし、谷査恵子氏が自分の判断で勝手にやったとすればそれは職務専念義務違反にもなります。

 憲法15条に、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」とありますが、谷査恵子氏や佐川宣寿氏ら国家公務員を「安倍夫妻の奉仕者」とした森友問題は、前近代的で前代未聞の憲法違反だと思います。

 下記の緊急院内シンポジウムは私が企画しました。ぜひご参加いただければ思います。(井上伸)

 

安倍首相が配った「おにぎり」は昭恵氏に注がれた1億円の結晶(谷査恵子氏ら昭恵氏付職員の汗の結晶)

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 昨年の総選挙公示日の10月10日、安倍晋三首相が福島市で演説した際、集まった有権者におにぎりを配ったとして、福島県警が公選法違反容疑で宍戸一照福島市議を事情聴取されていたことが各マスコミで報道されています。毎日新聞はそのときに動画も公開しています。(→毎日新聞:「おにぎり、食べてって下さい~!」安倍総理注目の第一声ですから、動画でばっちり撮っていました。

 そして、佐藤正久参院議員は、自らツイートで「【安倍総裁、福島市佐原での第一声、おにぎり、お酒、福島の米を通じた復興支援のアピールに感謝】昭恵夫人も田植えから稲刈りまで関与している福島の米「吾妻の輝き」、それを使ったおにぎりを食べ、お酒の宣伝も入れた復興支援にかける思い、佐藤の両親を含む約500名の聴衆も感動した模様。感謝」と書いています。

▼佐藤正久参院議員のツイート



 ここで前回の記事「昭恵氏の下僕とされた谷査恵子氏、1億円超える国家公務員人件費を昭恵氏に注いだ安倍政権の前近代性」のおさらいです。

 安倍政権は昭恵氏を「私人」と閣議決定したけれど、昭恵氏には「総理公務補助」をする役割があるため、「総理公務補助の支援」を行う昭恵氏付職員(国家公務員5人で人件費1億1千万円を投入)を日本で初めて常勤として運用しました。

 これを、今回の「おにぎり事件」で考えてみましょう。安倍晋三氏には首相と自民党総裁の2つの立場があります。安倍晋三氏は選挙戦においては、首相の立場ではなく自民党総裁の立場で第一声を行ったことになります。佐藤正久参院議員がツイートで「安倍総裁」と書いているのもその点を留意しているからです。

 そうすると、今回の「おにぎり事件」は2つの問題があります。

 1つは、おにぎりを有権者に配ったという公選法違反(飲食物の提供)にあたる問題。2つめは、安倍夫妻によって、「行政私物化」「国家公務員私物化」が行われたという問題です。

 前回の記事でも紹介したように、谷査恵子氏ら昭恵氏付職員は昭恵氏の田植えやおにぎりづくりをやらされています。

▼@mortal225さんのツイート



 安倍総裁が配布したおにぎりには、谷査恵子氏ら国家公務員の労働が投入されていたのです。国家公務員は国民の税金によって働いているので、安倍自民党総裁が自民党議員の応援で配布したおにぎりには国民の税金が投入されていたことになるわけです。

 昭恵氏は「総理公務補助」で田植えを行い、谷査恵子氏ら昭恵氏付職員は「総理公務補助の支援」で田植えをし、おにぎりづくりをしていたことだけでも昭恵氏による「行政私物化」「国家公務員私物化」は過去に例がない酷い憲法違反です。国民の税金1億1千万円を使って昭恵氏の田植えをしていたのですから、これだけでも安倍政権は総辞職すべきです。

 これに加えて、昭恵氏の「行政私物化」「国家公務員私物化」で生み出された「おにぎり」を、今度は公選法違反と同時に安倍晋三自民党総裁としても私物化したことになります。

 安倍晋三氏と昭恵氏は、首相夫妻の立場と、自民党総裁夫妻の立場の両方において、「行政私物化」「国家公務員私物化」をとことん行ったという、日本政治史上初の独裁夫妻というほかありません。

 昨日(4月4日)、安倍首相は、国家公務員合同初任研修開講式で、「国家国民のため、心を尽くし、身を尽くす。崇高な志を持って、国家公務員の道を歩み出す皆さんを、内閣総理大臣として、心から歓迎したいと思います。」、「国家公務員の仕事は、国の骨格をつくる仕事です。仕事の結果は国民全てに影響が及びます。」、「これから国家公務員として歩む人生、全体を見渡し、あらゆることに思いを巡らし、国民の信頼を得、負託に応えるべく、高い倫理観の下、細心の心持ちで仕事に臨んでほしい。」などと訓示しています。

 「高い倫理観」と言うに至っては、まさに「おまいう」(お前が言うな)の典型ですが、この安倍首相の訓示にある「国民」や「全体」「国」などの言葉を「安倍夫妻」に置き換えれば、今の事態がなぜ起こっているかがよくわかります。

 「安倍夫妻のため、心を尽くし、身を尽くす。崇高な志を持って、国家公務員の道を歩み出す皆さんを、内閣総理大臣として、心から歓迎したいと思います。」、「国家公務員の仕事は、安倍夫妻の国の骨格をつくる仕事です。仕事の結果は安倍夫妻全てに影響が及びます。」、「これから国家公務員として歩む人生、安倍夫妻を見渡し、あらゆることに思いを巡らし、安倍夫妻の信頼を得、負託に応えるべく、高い倫理観の下、細心の心持ちで仕事に臨んでほしい。」――これが、安倍夫妻の心からの訓示だと思います。

 こうした問題について来週火曜日に緊急院内シンポジウムを開催します。ぜひご参加ください。(井上伸

麻生財務大臣による福田事務次官のセクハラ容認は財務省だけでなく日本全体のセクハラ容認につながる

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 公文書改ざんなど森友問題に揺れる財務省の事務方トップの福田淳一事務次官が繰り返していたセクハラが明るみに出ています。福田財務事務次官が女性記者に対して「胸触っていい?」と言っている「セクハラ音源」がデイリー新潮のサイトに公開されたのです。

 ところが、麻生太郎財務大臣は、「本人の実績を踏まえれば、あの一点をもって能力に欠けると判断しているわけではない」などとして、処分の必要はないとの考えを示しています。

 セクハラをしても「本人の実績を踏まえれば」「処分の必要はない」などということが、国家公務員の職場でまかり通るものなのでしょうか?

 国家公務員に対する「懲戒処分の指針」(人事院事務総長発、最終改正:2016年9月30日)に、以下の「セクシュアル・ハラスメント」の項目があります。

 

 (13) セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)

 ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。
 イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。
 ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。


 今回の福田財務事務次官のケースは、上記の「イ」の「わいせつな言辞等の性的な言動を繰り返した職員は、停職又は減給とする。」に当てはまりますから、「停職又は減給」処分をする必要があるのです。

 それから、政府・厚生労働省は、セクハラ予防対策は事業主の義務とする男女雇用機会均等法の第11条に基づいて、「事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」というパンフレットを発行しています。その冒頭で厚労省は次のように指摘しています。

 

 職場におけるセクシュアルハラスメントについて必要な対策をとることは事業主の義務です。必要な措置は10項目あります。
 職場でのセクシュアルハラスメントは、働く人の個人としての尊厳を不当に傷つける社会的に許されない行為であるとともに、働く人が能力を十分発揮することの妨げにもなります。それはまた、企業にとっても、職場秩序の乱れや業務への支障につながり、社会的評価に悪影響を与えかねない問題です。
 男女労働者がセクシュアルハラスメントのない職場でいきいきと働くことができる雇用管理の実現に向けて、法に沿った対策はもちろんのこと、自社に合ったより効果的な対策に積極的に取り組みましょう。

 そして、事業主の義務として10項目のセクハラ対策が必要だとして、その10項目の1つめに「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」を厚労省はあげ、「セクシュアルハラスメントに当たる性的な言動をした場合に具体的にどのような対処がなされるのかをルールとして明確化し、労働者に認識させることによってセクシュアルハラスメントの防止を図ること」が必要だとしています。これは国家公務員の場合は、上記で紹介した「わいせつな言辞等の性的な言動を繰り返した職員は、停職又は減給とする。」という「具体的な対処」を行うことによって、セクハラの防止を図ることが必要だということになります。

 以上、見てきたように、麻生財務大臣の「本人の実績を踏まえれば、あの一点をもって能力に欠けると判断しているわけではない」などということは、国家公務員の「懲戒処分の指針」にも反しますし、セクハラ予防対策は事業主の義務とする男女雇用機会均等法と、政府・厚労省が事業主にセクハラ対策を義務としている点とも反します。麻生財務大臣による福田財務事務次官のセクハラ容認は、国家公務員の職場をセクハラ容認職場とする上に、政府・厚労省として行っている日本社会におけるセクハラ防止対策をも蹂躙するという2重の意味でセクハラ容認社会を推進するものです。

 ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮弁護士の次のツイートが問題を端的に言い表しています。麻生財務大臣はただちに福田財務事務次官を処分すべきです。


https://twitter.com/ssk_ryo/status/984597104369647616
https://twitter.com/ssk_ryo/status/984596244763852801

(井上伸)

自殺した近畿財務局職員Aさんは安倍政権・財務省による森友公文書改ざんと自分への責任転嫁に絶望した

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 『文藝春秋』5月号に、森友公文書改ざん問題にかかわって自殺した近畿財務局職員の父親の手記「息子は改ざんを許せなかった――誰が指示したのか。真相を究明してほしい」が掲載されています。この手記を読んだ全経済産業省労働組合副委員長の飯塚盛康さんが感想を書いてくれたので以下紹介します。

 『文藝春秋』5月号に「自殺・近畿財務局職員父親の慟哭手記 息子は改ざんを許せなかった――誰が指示したのか。真相を究明してほしい」が掲載されました。

 自殺した近畿財務局の職員Aさんは1962年もしくは63年に(享年55歳)岡山県の会社員の長男として生まれ、決して裕福とはいえない家庭でしたが、本を読むのとスポーツが大好きで元気で明るい子どもに育ったそうです。

 Aさんには弟さんがいて、お父さんは積極性があるAさんは大学に行かなくても職に就けるが弟さんは大学に行かせなければ仕事に困ると思って、Aさんの大学進学を諦めさせました。そしてAさんは文句を言うこともなく18歳で国鉄に勤務しました。

 国鉄分割民営化による人員整理のため、国鉄等職員再就職計画によって1987年にAさんは財務省に入省しました。初任地は島根県の財務事務所で、その後は和歌山、京都の後は霞が関の本省に長く勤務した後、10年ほど前に近畿財務局に転勤し、現在に至っています。

 Aさんは国鉄の民営化による再就職計画によって国の機関に転職しましたが、それ以前には林野庁の廃止、最近では農水省の食糧事務所の廃止によって国の機関に転職する人はいました。

 私が勤務していた関東経済産業局にも林野庁、国鉄、食糧事務所からトータルで20名を超える人が転職してきましたが、共通していえることは、全員真面目で優秀な人だということです。なかには管理職だった人も関東経済産業局では補佐あるいは係長になるのですが、それでも腐ることもなく、単身赴任の不自由な生活にも不平を言わず真面目に働く人ばかりでした。

 彼らは全員労働組合に加入してくれたので、何度も話をしたことがあるのですが、「仲間の中には、どうしても転勤ができずに辞めざるを得なかった人もいる中で、自分たちは国の機関に再就職させてもらっただけで感謝している。自分たちは外様なので、この職場のために一生懸命に働きます」と言うのです。Aさんの財務省に対する思いも同じだったのではないかと思います。

 Aさんは京都に勤務していた時に大学の夜間部に入学したそうです。大学に行きたいという夢をかなえるためだけでなく、真面目なAさんは財務省の仕事をもっと深めて、役に立ちたいとの思いで大学に入学したのではないかと思います。

 Aさんは公文書の改ざんが行われた頃から、毎日午前2時3時の帰宅が続き、その後休職し、3月2日に朝日新聞が決裁文書の改ざんを報道した数日後に自殺しました。

 自殺したAさんは「決裁文書の調書の部分が詳しすぎると言われて上司に書き直させられた」「勝手にやったのではなく財務省からの指示があった」「このままでは自分一人の責任にされてしまう」というメモを残していたそうです。

 財務局の仕事に誇りを持って真面目に仕事をしていたAさんにとって、こんな不正行為をやらされただけでなく、その責任をAさん一人に負わせようとした近畿財務局、財務省に絶望したのではないかと思います。

 国家公務員は一握りのキャリアの下に何万人というノンキャリ職員が、地味な仕事をコツコツと真面目にやっています。

 Aさんと同じ50代でノンキャリ課長補佐だった私は、国会で総理大臣が「私か妻が関わっていたら議員も総理大臣も辞めますよ」と言ったワンフレーズのために、キャリア官僚が国会でウソの答弁を繰り返し、ノンキャリ職員が不正な行為をやらされて自殺に追い込まれたことを許すことができません。(全経済産業労働組合副委員長・飯塚盛康)

「お店の女性」や「仲間内」ならセクハラOKとする福田財務事務次官・麻生財務大臣・安倍首相

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 福田淳一財務事務次官がこのまま財務省という行政の根幹の事務方トップを担い続けることは、さらに行政を歪めて日本をセクハラ容認社会、構造的な女性差別社会へと一層陥れるものになると思います。いま事務次官の人事は内閣人事局が掌握しているので福田事務次官の人事は麻生財務大臣だけでなく安倍首相自身にも直接責任がある問題でもあります。

 まず、時系列を見てみましょう。

 ◆4月11日 デイリー新潮が「女性記者に「胸触っていい?」「浮気しよう」 財務省トップがセクハラ発言」記事を掲載

 ◆4月12日 麻生太郎財務大臣は福田財務事務次官に対し「財務省が置かれている状況を考え緊張感を持って対応するよう訓戒を述べた」。福田氏から記事に関する報告を受け「訓戒で十分だと思っている」と強調。追加の調査や処分はしない考えを示した。福田氏は「(セクハラと指摘された)やりとりは定かではないが、誤解を受けることのないよう気をつけたい」と謝罪したという。(共同通信)

 ◆4月13日 デイリー新潮が「「財務省トップ」福田淳一事務次官のセクハラ音源公開!
  ※この音源の中で新潮の記者に対して、福田事務次官は「そんなこと言ってないよ、失礼な」と激怒。

 ◆4月16日 福田事務次官、セクハラ否定「事実と相違、提訴準備」
 「女性記者に対して、その相手が不快に感じるようなセクシャル・ハラスメントに該当する発言をしたという認識はない」とのコメントを発表。(ロイター)
 財務省が公式サイトに「福田事務次官に関する報道に係る調査について」をアップ

 財務省サイトにアップされた「調査」の「福田事務次官からの聴取結果」には、「お恥ずかしい話だが、業務時間終了後、時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある。また、仲間内の会話で、相手から話題を振られたりすれば、そのような反応をするかもしれない。しかしながら、女性記者に対して、その相手が不快に感じるようなセクシャル・ハラスメントに該当する発言をしたという認識はない。」などと書かれています。

 以上が時系列ですが、4月12日の時点で、麻生財務大臣は福田事務次官に「訓戒」をして、福田事務次官は「謝罪」しています。この「訓戒」と「謝罪」は何に対して行われたのでしょうか? 福田事務次官に言葉によると(セクハラを行ったと)「誤解を受け」ていることに対してのようです。

 セクハラ音源が公開された4月13日には「そんなこと言ってないよ、失礼な」と福田事務次官は激怒。この対応で、セクハラ音源は事実だとすると酷い行為だということを自らも認識していることが分かります。

 ところが、4月16日になって福田事務次官は要するに女性記者にはセクハラしていないが、「お店の女性と言葉遊びを楽しむ」か「仲間内の会話」だったのだから何も問題はないのだと方向転換しています。さて、このセクハラ音源は問題がないのでしょうか?

 以前書いた「麻生財務大臣による福田事務次官のセクハラ容認は財務省だけでなく日本全体のセクハラ容認につながる」の中で、紹介したように、国家公務員の「懲戒処分の指針」のセクハラ行為のところには、「相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。」と明記されています。

 福田事務次官は公開された音源の中で、「旦那は浮気しないタイプなの?」「予算通ったら浮気するか」「胸触っていい?」「手縛っていい?」と言い、女性は「そういうこと本当やめてください」と拒否しています。

 これが、国家公務員の「懲戒処分の指針」にある「相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞を繰り返した職員」でなくて何だというのでしょうか?

 また、「お店の女性と言葉遊びを楽しむ」とか「仲間内の会話」ならこれはセクハラでも何でもないと福田事務次官も財務省も麻生財務大臣も主張していることになりますが、こんなことが許されていいのでしょうか? 「お店の女性」でも「仲間内」でも「相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞を繰り返した職員」にかわりはないのです。

 それから、福田事務次官は「お店の女性と言葉遊びを楽し」んでただけだから問題ないと強調したいようですが、「旦那は浮気しないタイプなの?」「予算通ったら浮気するか」などという会話を「お店の女性」とするというのも違和感があるように思います。この点でも既婚の女性記者に対するセクハラ発言といえるのではないでしょうか。重ねて「お店の女性」に対してならセクハラをしてもいいとは国家公務員の「懲戒処分の指針」には書いていません。

 これも前の記事で紹介していますが、男女雇用機会均等法11条で事業主はセクハラ対応措置をとる義務があって、厚生労働省は10項目をあげています。その6つめの項目には「被害者に対する適正な配慮の措置の実施」があり、「行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、均等法第18条に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。」が示されています。今回の福田事務次官による「提訴すべく準備を進めている」ことにあわせ、女性記者には調査に協力するよう求めていることは、被害者に対する「脅し」「恫喝」にほかならず、厚労省が義務づける「被害者に対する適正な配慮の措置の実施」とは全く真逆と言わざるを得ません。また、9つめの項目には「当事者等のプライバシー保護のための措置の実施と周知」や、最後の10番目の項目には「相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発」として、「労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントに関し相談をしたこと又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。」となっているのに、この点についても加害者側である財務省が用意した弁護士で被害者側の「プライバシー保護のための措置」や「不利益な取扱いを行ってはならない」などがきちんと担保できるとは到底思えません。被害者保護もせず、セカンドレイプ的発想で福田事務次官を擁護する財務省は最悪だと思います。

 厚労省が事業主の義務とする10項目の1つめの「セクハラの内容、あってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」と、2つめの「行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発」という最も基本的なことが、安倍政権、麻生財務大臣にはできていないのです。男女雇用機会均等法のセクハラ対応措置すらとらず、セクハラ根絶どころか、セクハラがまかり通る社会、セクハラ容認社会を広げる安倍政権に「女性活躍」推進などできるわけがありません。

(井上伸)

セクハラ加害者・福田事務次官と一体になってセカンドハラスメントを行う財務省・麻生財務大臣

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 セクハラ被害者がその事実を訴えることで、逆に二次被害を受けることをセカンドハラスメント(セカハラ)と言いますが、今回の福田淳一財務事務次官と財務省、麻生太郎財務大臣の対応はセカンドハラスメントに当たると思います。

 前の記事「「お店の女性」や「仲間内」ならセクハラOKとする福田財務事務次官・麻生財務大臣・安倍首相」に続き、今回は財務省によるセクハラ被害者に名乗り出ることを求める調査がセカンドハラスメントになるという問題についてです。

 いま財務省の調査について批判が巻き起こっていることは東京新聞のツイートでよく分かります。

▼東京新聞のツイート
https://twitter.com/tokyoseijibu/status/986393509161660416



 マスコミ報道によると、麻生太郎財務大臣は4月17日、財務省の顧問弁護士が調査するのは公平ではないという指摘に対して、「女性が名乗り出やすいように第三者である女性の弁護士も入れて対応する」と述べ、調査の進め方に問題はないという認識を示したとのことです。

 麻生財務大臣は「第三者である女性の弁護士」だから名乗り出やすいなどと言っていますが、「財務省の顧問弁護士」は、財務省(麻生財務大臣)の省益を最大限にするのが仕事であって、財務省職員のセクハラ問題を公平・公正に扱うことが仕事ではありません。弁護士には守秘義務があるではないか、という方がいますが、財務省の顧問弁護士が守秘義務を負うのは依頼者の財務省(麻生財務大臣)になりますから、名乗ってきた女性記者に対して守秘義務が生じることにはなりません。

 加えて、財務省の省益を守るための仕事をしている顧問弁護士に女性記者が名乗り出なければ、福田事務次官のセクハラはそもそもなかったことになると麻生財務大臣は言っているわけです。


 財務省を民間企業に置き換えてみるとこうなります。平気で決算書なども改ざんし、それによって社員に自殺も強いるブラック企業の専務(福田事務次官)が下請企業からセクハラを告発され音声データも公表されたのに、社長(麻生財務大臣)が「専務は下請企業を名誉毀損として提訴準備中だが、わが社の顧問弁護士には女性もいるからセクハラ被害者は名乗り出ろ。名乗り出ないなら専務によるセクハラはそもそもなかったことになる」と豪語していることになります。(※森友公文書改ざんとノンキャリ職員の自殺まで引き起こした財務省をブラック企業に置き換えることに異論がある方はあまりいないと思いますが、マスコミをその下請企業とまでしてしまうのはやり過ぎですね。ここでは分かりやすさを優先したということでご了承を)

 これが、セクハラ被害者への恫喝、セカンドハラスメントでなくて何と言うのでしょうか? また、マスコミに対する恫喝でなくて何と言うのでしょうか? 少なくとも財務省は、セクハラ被害者に対して、セクハラ被害者側の弁護士を通じて匿名でいいので福田事務次官のセクハラ問題の検証に協力して欲しいとするべきだと思います。(※ぜひご協力ください→ネット署名「財務省は、セクハラ告発の女性に名乗り出ることを求める調査方法を撤回してください!!」

(井上伸)

本省庁の女性職員4人に1人がセクハラ被害、“最強官庁”財務省がセクハラ二次被害を拡散し続ける異常

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 国家公務員は憲法第99条において「憲法を尊重し擁護する義務を負う」と明記されています。国家公務員は国民の基本的人権を守るのが仕事なのに、「官庁の中の官庁」「最強官庁」であり、国民の基本的人権を守るための徴税と再分配機能の要となる財務省の事務方トップである福田淳一事務次官が、人権侵害であるセクハラを恒常的に行っていたことが明らかになり辞任を表明するにいたりました。

 しかし、福田氏はテレビ朝日による会見(テレ朝の女性記者がセクハラ会話を録音したデータを新潮社に提供していたことを明らかにした会見)を経ても、「録音は相手が話しているところをとっていないので、全体を見てほしいというのは前から申し上げている。全体を見てもらえればセクハラに該当しないというのはわかるはずです」、(「セクハラで辞任するのではないのか」という質問に対して)「違います。こういう状況になっていて仕事にならないので辞めます」となんら反省がないどころか逆ギレしたままです。財務省も公式サイトに人権侵害の二次被害(セカンドハラスメント)となる「調査」を継続しています。セクハラ告発の女性に名乗り出ることを求める調査方法を撤回しないということは、日本の「官庁の中の官庁」「最強官庁」と事務方トップがこの期に及んでもセクハラを人権侵害と認識し反省しないばかりか継続して人権侵害となる二次被害を拡散していることは異常としか言いようがありません。

 福田氏は、マスコミからセクハラに対する認識が甘いのではないかと指摘されて、「(自身がコメントで発表した)『言葉遊び(を楽しむことはある)』のところがご批判を受けている。なるほど、今の時代ならそんな感じなのかなと思いました」と語ったとのことですが、これが「官庁の中の官庁」「最強官庁」の事務方トップの発言なのかと驚愕しました。こんな官庁のセクハラ実態はどうなっているのか誰もが気になるところだろうと思います。官庁で働く国家公務員で組織する国公労連はじつはちょうどこれから新しいセクハラ・パワハラ実態調査を始めるところなのですが、前回の実態調査結果がありますので紹介しておきます。

 国家公務員の職場でのハラスメントの実態を明らかにし、政府・人事院に対する施策の強化等を求める根拠として活用することを目的に、2011年2月下旬から3月にかけて「セクハラ・パワハラ実態調査」を実施しました。

 職場の実態を把握するため、正規職員だけでなく非常勤職員や派遣職員など官庁で働く労働者を対象に、全体で2.075人から回答を集約しました。その内訳は以下になります。



 2,075人中、セクハラを受けたことがある職員は188人9.1%でしたが、女性に限ると19.5%がセクハラを受けています。また、本省庁の女性に限ると23%がセクハラを受けており、およそ4人に1人弱がセクハラを受けたことがあるという実態がわかっています。本省庁職場は、「時給500円で働く霞が関の国家公務員、ノンキャリをうつ病に追い込むキャリア官僚「クラッシャー」の跋扈、窓から飛び降りた方が楽と思わせる不眠不休の霞が関不夜城」と呼ばれ、長時間労働が酷いわけですが、同時に女性へのセクハラも酷い状況になっているわけです。

 モリカケ問題、公文書改ざん、虚偽答弁、ノンキャリ職員の自殺昭恵氏による下僕化、そして今回の事務方トップによるセクハラと二次被害という人権侵害の拡散。続発する問題の中で、国家公務員のあり方、行政のあり方が根本から問われ、現場の国家公務員へのしわ寄せによる長時間労働が蔓延するなか、一連の問題の改善を訴え国公労連は5月9日に霞が関総行動を実施する予定です。

(井上伸)


麻生財務相「5年前より悪いのは運ない」→賃金も消費も最低、富裕層40人が全世帯の資産の半分を独占

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 麻生太郎財務大臣が「5年前より今の方が悪いという人は、よほど運がなかった」、「ほとんどの(経済統計の)数字は上がってますから」と発言(4月17日、吉田博美参院幹事長のパーティーのあいさつで発言)しています。本当でしょうか? 政府統計等で検証してみましょう。

 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の実質賃金の直近データでグラフを作ると以下になります。

 



 上記を見れば一目瞭然、厚労省データでさかのぼれる実質賃金で過去最低です。(※関連→「安倍政権の4年間で労働者の賃金は54万円消えた――過去最低の実質賃金と過去最高の内部留保を生んだアベノミクス」)

 総務省の「家計調査」の家計消費指数の直近データでグラフを作ると以下になります。



 実質賃金が過去最低になっているので当たり前ですが、家計消費も上記にあるようにデータでさかのぼれる36年間で最低にしたのが安倍政権です。(※関連→「史上最悪の消費不況もたらした安倍政権=リーマンショック超えた家計消費支出15カ月連続減、35年間で最低の消費支出となった2016年」)

 それから、「フォーブス」誌のデータ金融広報中央委員会厚労省データから作ったグラフが以下です。

 



 安倍政権の5年間で、貯蓄ゼロ世帯数は401.2万世帯も増加し(割合のポイントは7.4ポイントも増加)、逆に富裕層上位40人の資産は2倍と倍増しています。そして、日本において富裕層上位40人の資産が半分の世帯(2,607万世帯)の資産と同じになってしまっているのです。

 下のグラフにあるように、安倍政権5年の激増ベスト3は富裕層資産・大企業役員報酬・自民党への献金、労働者には非正規化・賃下げ・貧困・過労死、自民党が選挙に勝って得するのは富裕層と大企業役員だけです。(※このグラフは私が作成したものですが、2017年10月時点の直近データによるものなので一部のデータはすでに古くなっています。今度、時間が取れたときに更新作業をしたいと思っています)

 



 統計データがこんなありさまですから、はるさんが指摘されているように、世論調査からは景気の回復を実感していない層が圧倒的多数であることが以前から明らかです。

 麻生太郎財務大臣の「5年前より今の方が悪いという人は、よほど運がなかった」、「ほとんどの(経済統計の)数字は上がってますから」は大ウソで、「5年前より今の方が良いという人は、自民党が選挙に勝って得した富裕層と大企業役員だけ」というのが「ほとんどの(経済統計の)数字が示す事実ですから」。

(井上伸)

フランスの2倍以上働く日本の男性労働者、 #メーデー 130年来の8時間労働制をも葬り去る高プロ

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 きょう5月1日は労働者の日“メーデー”です。メーデーは労働時間を8時間に短縮するとともに賃金を据え置く、つまり労働時間短縮による実質的な賃上げを求める運動を毎年5月1日に全米で行うことを1884年に決めたのが始まりです。1日12時間から14時間労働が当たり前だった当時、「第1の8時間は仕事のために、第2の8時間は休息のために、そして残りの8時間は俺たちの好きなことのために」を目標にメーデーは行われたのです。

 こうした労働者のたたかいによって、たとえばドイツでは、1日10時間を超えて働くことは法律で禁止されています。また6カ月間の平均で1日8時間を超えて働くことが法律で禁止されています。年間30日の有給休暇を100%消化し、祝日と土日を加えると、1年の4割、約150日は大半の労働者が休んでいます。その上、ドイツの経済は好調で、労働者1人当たりの労働生産性は日本を5割近く上回っているのです。

 ところが、日本では平均の有給休暇支給日数20日に対して消化日数は10日で、消化率は50%と世界最下位です。そして、日本は▼下のグラフにあるように労働時間が増えています。

 



 国際比較すると、▼下のグラフにあるように、週49時間以上の長時間労働者の割合が日本は突出して多くなっています。

 



 ▼下のグラフはOECDデータによる、年間で休日を含む1日平均の男性の労働時間の国際比較です。日本の男性の労働時間はフランスの2倍以上になっています。(※日本は男女トータルの平均労働時間で世界一長くなっています)

 


 ▼下のグラフは同OECDデータによる男性の家事労働時間です。日本の男性の家事労働時間は世界一短く、フランスの7分の1、OECD28カ国平均の5分の1です。

 



 ▼下のグラフは同OECDデータによる労働者の睡眠時間です。日本はOECD28カ国平均より1時間以上も睡眠時間が短くなっています。

 



 労働時間が最も長く、睡眠時間は最も短いので必然と言えるでしょうが、▼下のグラフにあるように、日本では過労死が増え続けています。安倍政権は8時間労働を葬り去り残業代ゼロ・過労死促進となる高プロを含む「働き方改革一括法案」の審議を強行しましたが、これ以上、過労死を増やす「働き方改革一括法案」を強行することは許されません。(※参照→佐々木亮弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表「高プロ制度は地獄の入り口 ~ High-pro systm is the gate to hell~」

 



 次に賃金を見てみましょう。

 ▼下のグラフにあるように、安倍政権で賃金は16万円も減っています。一方、大企業の内部留保は過去最高を更新し続けています。

 



 ▼下のグラフにあるように、大企業の役員報酬額は1.8倍も増加しています。

 



 ところが、▼下のグラフにあるように、大企業の労働者の賃金も労働分配率も低下しているのです。

 



 そして、▼下のグラフにあるように、安倍政権下で非正規労働者数・率とも過去最高となり、ワーキングプアは史上最多となっています。

 



 ▼実質賃金も▼家計消費も安倍政権下で最低になっています。

 

 



 また、安倍政権下で▼日本のジェンダーギャップ指数は過去最低となり、▼日本の女性の所得は男性の半分しかありません。

 



 上記で紹介した数字が積み重なった結果、▼安倍政権の5年間で、貯蓄ゼロ世帯数は401.2万世帯も増加し(割合のポイントは7.4ポイントも増加)、逆に富裕層上位40人の資産は2倍と倍増しています。そして、日本において富裕層上位40人の資産が半分の世帯(2,607万世帯)の資産と同じになってしまっているのです。


 そして、▼下のグラフにあるように、安倍政権5年の激増ベスト3は富裕層資産・大企業役員報酬・自民党への献金、労働者には非正規化・賃下げ・貧困・過労死、自民党が選挙に勝って得するのは富裕層と大企業役員だけです。

 



(井上伸)
 

敗戦直前の日本は国の財政の85%を軍事費に投入=憲法9条改悪は私たちの暮らしを掘り崩すということ

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 憲法施行71周年のきょう(5月3日)、東京では「9条改憲NO!平和といのちと人権を!5・3憲法集会」が有明防災公園で開催され6万人が参加しました。メインスピーカーの竹信三恵子さん(ジャーナリスト、和光大学教授)の発言要旨を紹介します。(※文責=井上伸

 どうしてこんなにひどい安倍政権に3割もの支持がいまだにあるのでしょうか?

 いろいろな問題がたくさんあると思います。その中で憲法9条の問題について、私たちはもっと幅広く言葉を獲得しなければいけないという課題があると思うのです。

 憲法9条にあまり関心がない人の頭の中には、憲法9条と言えば戦争のことだけしかインプットされていません。でも憲法9条というのは、本当はものすごく幅広い裾野を持っているのです。

 それは戦争をしていたときの日本社会をきちんと見ればよくわかります。過去、日本は戦争をするたびにものすごい軍事費を使いまくっていました。統計を調べてきました。日清戦争のときに日本は国の財政の69.4%を軍事費に使いました。それから日露戦争のときは81.9%、さらに日中戦争後は7割代を軍事費に使って、敗戦直前の1944年は85.3%でした。戦争する日本は、国の財政の85.4%を戦争のために使っていたのです。

 これに歯止めをかけられないで、どうやって国のお金を私たちの暮らしや社会保障や生活の安定、貧困解決に使えるのでしょうか?

 戦争が終わったときの憲法9条には、これを大転換させるという意味があったはずです。だから70年も9条を変えなかったわけです。その転換に賛同してきたからです。憲法9条は軍事費増大への歯止めであり、天井であり、キャップをはめているわけです。

 この憲法9条の軍事費増大への歯止めの上に、生存権を守る憲法25条や、女性の家庭内の平等を保つ憲法24条があり、また私たちには働く権利があるのだから国はそれを保障せよとする勤労権保障の憲法27条、そしてそれを使って労働組合をつくって私たちの働く条件を良くするために労働三権を使うという憲法28条があります。私たちのいろいろな権利を守るためには、戦争をしてはいけないということです。

 もし、なんらかの方法で9条の枠をはずしたとします。いま盛んにそれをやろうと安倍政権は言っています。もし憲法9条の枠をはずして野放図に軍事費が増えていってしまったら社会保障をきちんとできますか? 軍事費の増大に歯止めをかけていた9条の枠がはずれるということは、そういう状況になるということです。このことを改憲問題を論じるときや、とくに改憲は問題ないと言っている人たちはどれくらいそのことを意識しているでしょうか?

 「いま介護や保育を充実させることの方がずっと大事なのに、憲法9条とか戦争とかそんな話をしている場合じゃないでしょ」とか、「憲法9条が変わっても私は関係ないです」と言う人もたまにいます。しかし、そう言う人にも関係があるのです。私たちがまともな育児支援やまともな介護支援、貧困対策、そして非正規労働者が4割近くまで増えてしまっている状況で、まともな生活を保障する国の義務ということを守るならば、軍事費にお金を使っちゃいけないんだという憲法9条のキャップを守らなければできないのです。そのことを関係ないと思っている人たちにも私たちはもっとわかってもらわなければいけません。

 いまのようなモリカケ問題を起こす政府において、憲法9条の歯止めをはずしたら、また7割、8割が軍事費に使われる時代が来ないとも限らないということをもう一度思い出す必要があると思います。

 「平和ボケ」と揶揄する言葉があります。私たちはそこそこのお金を民生に使うんだと規定した憲法に守られていて、もうその有難味がわからなくなっています。よくこうした憲法集会などに高齢者の人ばかりが来ていると言われますがそれは当たり前です。高齢者は単に戦争がダメだということだけではなくて、戦争が行われたいた時代、戦争が行われる社会では社会保障はほとんどかえりみられなかったし、女性は社会保障がない分を必死になって家族につくせと言われていたわけです。そのことを高齢者は体感しているのです。だから憲法9条というと言葉にしないけれど無意識のうちに自分たちが体験した暮らし、かつての困った状態、怖い状態が連想されていくわけですね。だからこうした憲法集会に高齢者は来るのです。

 若い人はそれに関心がないではありません。戦争についてのそうした実相が断ち切られてしまっていて、戦争する国になったら奨学金やいろいろなものが全部ダメになる社会になってしまうということが若者に理解されていないだけなのです。だから、私たちはそういう論理構成を持って、そういう言葉も獲得して、じつは戦争しない国というのは、奨学金もきちんとある、学費も安い、まともに教育が受けられる、若者の貧困がない、こういうことのために税金を使える国になるということなんだ。女性について言えば、子育て支援にきちんとお金が回ってくる、いまみたいに待機児童ばかりで大変な社会じゃないことができる国になる。そういうふうに発言していく必要があるということをみなさんとぜひ共有できればと思います。

 こういうことがこれまできちんと共有されて来なかったと思います。私たちは2つの岐路に立っています。国威発揚で誰か一部の人がいい気分になるための国に転換させるのか? それとも原則として国民のためにお金を使うきちんとした社会状況を守るのか? その岐路に立っているわけです。

 ですから今のまま憲法9条を守り切ることができれば、私たちはこれまで憲法9条の枠をはずそうとする人たちにじわじわと掘り崩されてきたいろいろな私たちの権利を、もう一回確認し取り戻すことができるのではないでしょうか?

 もっと実態にあった改憲をしたいという人がいますが、いまそんなことを言っている場合ではありません。いまの争点は、国威発揚のための改憲で国民が貧困に陥り格差が広がるか? それとも国民の生活を守る道か? それがいまの改憲の争点だということをもう一度ここでみなさんと共有したいと思います。頑張りましょう。

子どもの数も割合も過去最少、教育と暮らしの貧困で「結婚・子育て」そのものが困難な日本

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 きょうはこどもの日。毎年、総務省が子どもの数を発表していますが、2018年4月1日現在の15歳未満の子どもの数は、前年より17万人少ない1,553万人で、1982年から37年連続の減少となり、比較可能な1950年以降の統計で過去最少を更新。人口に占める子どもの割合も44年連続の減少で過去最少を更新しています。(※下の2つのグラフは総務省サイトからです)

 



 この総務省発表データの中には国際比較もあります。それをグラフにしてみたものが以下です。日本は子どもの割合が主要国最低であることがわかります。

 



 この少子化を最大の課題として昨年「国難突破解散」を行った安倍首相。なんと言っていたのか「こどもの日」に振り返っておきましょう。

 

 少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢、正に国難とも呼ぶべき事態に強いリーダーシップを発揮する。自らが先頭に立って国難に立ち向かっていく。これがトップである私の責任であり、総理大臣としての私の使命であります。苦しい選挙戦になろうとも、国民の皆様と共にこの国難を乗り越えるため、どうしても今、国民の声を聞かなければならない。そう判断いたしました。

 この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。北朝鮮の脅威に対して、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります。

2017年9月25日 安倍内閣総理大臣記者会見

 さて、安倍首相は少子化という「国難突破」へ「強いリーダーシップ」を発揮して「全身全霊を傾け」責任を果たしているのでしょうか?

 

 下のグラフは内閣府の2017年版「少子化社会対策白書」に掲載されているグラフです。

 

 



 上のグラフを見てわかるように、「理想の子供数を持たない理由」で断トツに多いのは、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」です。そうすると、安倍首相には当然この「国難突破」のために「強いリーダーシップを発揮」して「子育てや教育にお金がかかりすぎる」現状を変えてもらわなければなりません。ところが、下のグラフにあるように、教育予算を削減してきたのが安倍政権です。そして、日本の教育への公的支出はOECD34カ国で最低です。

 

 



 さらに、安倍政権は教育予算を削減するだけでなく、下のグラフにあるように、貯蓄ゼロの子育て世帯を増加させたり、子育て世帯の可処分所得を減少させるなど、少子化という「国難」を「突破」するどころか、一層少子化を加速させています。

 

 



 上のグラフは後藤道夫都留文科大学名誉教授と一緒に作ったものですが、「安倍首相「子どもの貧困を改善した」は本当?→結婚・子育てが階層ステイタス化、子育て世帯の実質可処分所得は大幅減で貧困深刻化」と指摘しているように、今の日本社会は「結婚・子育て」そのものが普通のことではなく困難なことになっているので、少子化が加速するのは当然の結果と言わざるを得ないと思います。

(井上伸)

霞が関不夜城で1万人が過労死の危険感じ働く、モリカケ問題等で残業・心の病・転職者が急増

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 きょう(5月9日)午後7時から午後11時まで「霞が関公務員相談ダイヤル」を実施します。



 私たちが実施した「霞が関2017年残業実態アンケート結果」によると、過労死の危険ラインとされる残業月80時間以上が6.5%(2,210人)、とりわけ過労死の危険が高い残業月100時間以上が3.1%(1,054人)となっています。そして、3割(約1万人)が過労死の危険を感じたことがあると回答しています。



 残業の要因としては、「業務量が多いため」が57.0%(前年59.5%)と依然として最も高く、次いで「国会対応のため」30.3%(前年29.4%)、「人員配置が不適切なため」27.1%(前年29.1%)、「不合理な仕事の進め方のため」18.3%(前年18.5%)が続いています。業務量に見合う職員が十分に配置されていないことが、霞が関の長時間労働の最も大きな要因であることは明らかです。

 このような過酷な超過勤務に対して、手当の支給実態をみると「全額支給されている」との回答は49.7%(前年49.3%)となっています。これを支給割合別にみると「20%未満」が2.7%、「40%未満」が4.6%、「60%未満」が10.1%となっており、「不払いがある」者は、全体の41.2%(前年42.4%)となっています。

 下記は霞が関の残業でまかなっている人員を計算したもので、年間約8千人分の仕事を残業でこなしていることになります。霞が関の国家公務員数(管理職を除く一般職)は3万4千人ですが、残業をなくすには約8千人の職員増が必要になるということです。

 きょうは「霞が関公務員相談ダイヤル」のほか、各政党要請行動や、「霞が関不夜城ウォッチング」を取り組みます。下の表は2015年6月に実施した「霞が関不夜城ウォッチング」です。午前1時半で厚生労働省は6割が点灯していましたが、さて「働き方改革一括法案」を現在進めている厚労省のきょうの実態はどうでしょうか?

 それから、きょうの取り組みにあわせて、昨日「霞が関で働く国家公務員座談会」を行いましたので以下紹介します。

〈霞が関で働く国家公務員座談会〉
霞が関不夜城で1万人が過労死の危険感じ働く
モリカケ問題等で一層の長時間残業、メンタル疾患、転職者が急増
(A省Aさん、B省Bさん、C省Cさん)


 A もともと霞が関の長時間労働はひどかったのですが、モリカケ問題が起こってからさらに拍車がかかっていますね。

 B そうですね。国会対応でいちばん大変な部署では月300時間の残業があり、ほとんど家に帰れない状況が続いています。

 C 国会対応に加えて、森友公文書改ざんの余波で、対処療法的な文書管理に関する会議や実務がやたらと増えてそれでも忙殺されています。もちろん文書管理はきちんと行われるべきですが、場当たり的に現場にだけしわ寄せが来る典型のような実態もありますね。

 A 森友問題にかかわって、きょう(8日)麻生財務大臣が公文書改ざん問題について「どの組織だってありうる。個人の問題だ。個人の資質によるところが大きかった。組織全体でやっている感じはない」と述べたのはとんでもないですね。

 B 自殺した財務省の近畿財務局職員Aさんは安倍政権・財務省による森友公文書改ざんと自分への責任転嫁に絶望したわけですが、死人に口なしのような扱いであまりにひどい発言だと思います。

 C 近畿財務局職員Aさんはノンキャリ職員です。ノンキャリ職員が「個人」で勝手に公文書改ざんをするわけがありません。

 A 麻生財務大臣のノンキャリ職員にだけ責任を押し付けるやる方は、国家公務員全体のメンタルにダメージがあると思います。

 B 「もうやってられない!」という感じが霞が関の現場で広がっていますね。

 C やっぱり、内閣人事局ができて幹部職員の人事を首相官邸が握ってから、キャリア官僚が自分の省庁の上よりも首相官邸を向いて仕事をするようになりましたね。それで、無理難題を押し付けられたキャリア官僚が、首相官邸のウケをよくするためにそれを自分の部下になかばパワハラ的なやり方で、強制的にあれをやれ、これもやれ、と押し付けて、結果、各省庁の大事な仕事より首相官邸のウケがいい仕事の方が増えていっています。

 A 昔からクラッシャー上司のキャリア官僚が点在していて、それで部下はつぶされて若手キャリア官僚も辞めていくことは多かったのですが、最近は、クラッシャー上司のキャリア官僚が内閣人事局によって首相官邸に向けた仕事をするようになって、従来よりもさらに首相官邸の強権を持ったクラッシャー上司のキャリア官僚が幅をきかせている感じです。まさに「首相案件」という権力をバックにしてクラッシャー上司も一層危険な存在になっていますね。

 B その首相官邸のウケがいい仕事をやらされてそれでなんらか報われるのならまだいいのですが、逆に近畿財務局職員Aさんのように、組織的にやらないとできないはずの公文書改ざんの責任を「個人」の責任にされるのではたまったものではありません。

 C 首相官邸のために組織的にやってきた仕事なのに、現場のノンキャリ職員の「個人」に責任を押し付けるし、佐川前国税庁長官のようにキャリア官僚のトップでさえ切り捨てられているので、ノンキャリ職員も、キャリア官僚も転職がやたらと増えていますね。

 A そうですね。とりわけ若手を中心に、地方自治体や民間企業に転職するケースが増えています。

 B モリカケ問題等の国会対応でどんどん仕事量が増えているのもそうなのですが、森友のように公文書改ざんまではいかないのだけど、少しでも首相官邸にウケがいいようにいろいろな調整をして国会答弁等をつくる仕事が増えていて、それに消耗してますますメンタル疾患が増えているように思います。

 C 首相官邸のウケがいいかどうかがキャリア官僚の評価基準のようになっているので、基本的にうまく立ち回る人間が出世することになり、結果として政策能力などが劣化していっているようにも思いますね。

 A 首相官邸のウケ狙いになると他律性がさらに増してしまっているのと、その仕事の結果の尻ぬぐいでさらに仕事量が増えることになる悪循環に陥っているので相当メンタル疾患が増えています。

 B その上、例年の定員削減で職場の余裕がなくなっているので、メンタル不調になった職員をたとえば少しは余裕がある部署で働いてもらうということもできなくなっています。

 C 昔はメンタル疾患の職員が出ると、「あいつが休むせいでまた忙しくなる」みたいな殺伐とした職場の雰囲気と悪循環があった感じだったのですが、最近は自分自身もいっぱいいっぱいなので、自分もいつどうなるかわからないという不安感が職場全体に広がる受け止めの方が多くなっている感じでどんどん悪い方にいっているようにも思います。

 A 霞が関に民間企業や地方自治体から出向して来る人がいるのですが、多くが1年足らずでメンタル疾患になっています。それで、霞が関から民間企業や地方自治体に次の人を出してくれと要望すると、そんな職場に人を出せませんよと民間企業に国が断られるようなケースも増えています。「働き方改革」をすすめる政府自体がこんな「ブラック」な働き方になっているわけですからひどいものです。

 B 派遣労働者も霞が関で働いているのですが、その部署にはクラッシャー上司がいて2週間で派遣労働者が職場に出て来れなくなりました。そんな職場にうちの派遣会社から人を出せませんと派遣会社からも人を派遣することを断られるような霞が関の職場にもなっています。

 C 「働き方改革」と言えば、政府や維新などは「高プロで残業代ゼロにすると残業代が払われないから残業そのものがなくなる」などと言っていますが、霞が関はすでに「残業代ゼロ」が横行しています。「残業代ゼロ」が横行しているのに「霞が関不夜城」で過労死の危険を感じたことがあるのが3割(約1万人)という実態を見れば、政府や維新などが言っている「高プロで残業がなくなる」は大ウソであることがわかりますね。

 A それと、「働き方改革」でテレワークの導入なども言われていますけど、結局、緊急の国会対応などで何日ぶりかでやっと帰れた家でも仕事をすることになってしまっているケースも増えていますね。

 B それから実態ですが、家に帰れないのが当たり前のような雰囲気になっていて、国会対応が翌日に必要でもう時間がないので職場に泊まって、朝着替えてに帰って戻って来るとか、ひどいときだと、月曜に来て週に2回しか家に帰れないとか、仮眠室があるわけじゃないので、自分の机の上で仮眠を取らざるを得ない職員が増えています。

 C 毎月150時間の残業をしていて、残業代は3万円しか出ないので、時給にすると200円という職員も多くいます。東京の最低賃金は958円ですから約5分の1という「ブラック企業」も真っ青な実態が霞が関にあるということです。

 A 毎月1~2件、自殺と自殺未遂の報告が流れてくるのですが、月100時間を超える残業の上に残業代は4割程度しか支給されていませんから、抜本的に職員を増やす必要があると思います。

 B 政府は「ゆう活」とか「プレミアムフライデー」とか、長時間労働を何ら改善することのない適当な目新しいかけ声をかけて「働き方改革」をやってる感を出したいようですが、政府のお膝元の霞が関では今も3割(約1万人)が過労死の危険を感じて懸命に働いている問題に対して、政府にはきちんと実効ある長時間労働規制と抜本的な職員増を行って欲しいと思います。

 

(井上伸)

柳瀬元首相秘書官の大ウソ=安倍首相に報告しない・首相から指示ない・メモ取らない・名刺交換しない

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 加計学園問題で、柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)が昨日(5月10日)、国会の参考人招致に応じ、加計学園関係者と首相官邸で計3回会ったことを明らかにしました。柳瀬氏は、加計孝太郎氏と安倍首相が親友との認識はあったと認める一方、加計学園関係者との面会を安倍首相に報告したり、指示を受けたりしたことはなかったとし、安倍首相の関与を重ねて否定しました。この参考人招致について全経済産業省労働組合副委員長の飯塚盛康さんが感想を書いてくれたので以下紹介します。

 私は柳瀬唯夫元首相秘書官(現経済産業審議官)と一面識もありませんし、この方について良い評価も悪い評価も含めて聞いたこともありません。しかし、昨日の国会での答弁は元経済産業省の職員として見てひどいと思いました。

 柳瀬氏は、「人と会うときは全員と名刺交換はしない」と言っていますが、少なくとも経済産業省の職員でそんな失礼なことをする人を私は見たことも聞いたこともありません。

 時事通信の報道によると、愛媛県知事が柳瀬氏の名刺を公表しました。愛媛県側に柳瀬氏の名刺があるので、柳瀬氏は愛媛県側に自分の名刺を面会時に手渡したのだが愛媛県側の名刺は出して来たが受け取らなかったことになります。これだとさらに失礼な人になってしまい首相秘書官、経済産業省審議官どころか一般の社会人として通用しないことになります。

 また、柳瀬氏は、面会しても「メモを取らない」と言っています。首相官邸で面会したとき、柳瀬氏が一番上の職責なので柳瀬氏本人が「メモを取らない」ことはあり得ると思いますが、面会に同席していた部下が必ずメモを取っています。面会後、そのメモは柳瀬氏本人に手渡されて内容を必ず確認しますので、柳瀬氏本人が「メモを取らない」ことはあり得ますが、面会の「メモはある」ので誠実な答弁ではありません。

 柳瀬氏は、「総理から指示もされないし報告もしない」と言い、「私は総理秘書官時代、物理的に日本にいないとか、物理的に時間がないということはあったかもしれませんが、私が動いている限りはアポイントの申し入れをお断りしたことはございません」とも言っています。

 首相秘書官が、安倍首相に無断で勝手に安倍首相の友人からのアポを受けて勝手に首相官邸で会うということは、民間企業に置き換えれば、社長秘書が、社長に無断で勝手に社長の友人からのアポを受けて勝手に社長室で会った上に、会ったことも社長に一切報告しないことになります。こんな非常識な社長秘書は存在しないでしょう。

 国家公務員の世界で言ってもこんなことはあり得ません。首相秘書官とはいえ、組織の人間なので、こんなことをする人は、人事評価で最低ランクになるでしょう。

 谷査恵子さんが籠池氏から依頼された内容を財務省に問い合わせてFAXで結果を報告したことも、柳瀬氏が加計学園や愛媛県や今治市と面会したことも、すべて「上司の指示もなく、報告もしないで、個人が勝手にやったこと。そして本人が書いた書類もメモも記憶さえもない」ということになっているのです。

 経済産業省はそういう職員ばかりなのかと批判されても仕方ないですよ。

 私は経済産業省の職員は仕事に対して前向きで(方向性が間違っていることも多々ありますが)、人あたりも良く、優秀な人が多いと思っています。

 昨日の柳瀬審議官の国会での発言は、経済産業省の職員のプライドを傷つけるものです。

 これは、彼個人を責めるのではなく、こういうことをやらせる安倍内閣そのものが責められるべきものだと思います。

 この間の虚偽答弁・公文書改ざん・法案に直接関わるデータねつ造・セクハラでも安倍内閣はしぶとく粘っています。

 昨日の柳瀬氏の国会答弁を聞いていて安倍内閣が倒れては困るのは、経済産業省のキャリア官僚ではないかと思いました。

 第2次安倍内閣になって経済産業省は官邸を牛耳り、官邸主導による産業競争力会議や規制改革会議などを通じて自分たちのやりたい施策(社会保障費の削減、年金積立金を使っての株価操作、労働者保護の破壊、国家戦略特区による規制緩和等)を進めてきました。

 前から経済産業省は他省庁の縄張りにまで口を出すので霞が関の嫌われ者でしたが、官邸を牛耳ることによって大手を振って他省庁の庭先に入り込むことができました。

 その結果、今は経済産業省に対する他省庁の恨みつらみは頂点に達しているのではないかと思います。

 もし、安倍内閣が倒れたら、経済産業省に対するさまざまな攻撃が始まるのではないかと戦々恐々の日々を過ごしていて、そのため、恥も外聞もなく安倍首相を支えるのに必死なのではないでしょうか。

 しかし、柳瀬氏は明らかにウソを言っています。首相秘書官であった人間に国会でウソを言わせた以上、内閣総辞職以外の結論はあり得ないと思います。

 首相秘書官であった人間が国会で平気でウソをついていいということになると、日本という国はウソが平気でまかり通る国、フェイク国家になるわけで、立憲主義や民主主義以前の独裁国家になってしまって日本はいいのかという次元の問題になってしまっていると思います。(全経済産業省労働組合副委員長・飯塚盛康)

高度プロフェッショナル制度がもたらす地獄絵図=48日間連続の休憩なし24時間労働が合法

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 安倍政権が来週にも衆議院厚生労働委員会で強行採決を狙っている「働き方改革一括法案」。なかでも高度プロフェッショナル制度は労働基準法が定める1日8時間、週40時間などの労働時間規制を適用除外にするもので「 #高度プロフェッショナル制度 は現代の奴隷制」です。

 高プロは「健康確保措置」として義務化する年104日(祝日除く週平均2日)と有給休暇5日付与の休日以外は、休憩なしの24時間労働が合法になります。

 しかも、この「健康確保措置」をきちんとやっているかどうかは、企業が高プロ導入の半年後、労働基準監督署にたった1回だけ報告する義務があるだけです。ブラック企業をなくすためにある労働基準監督署高プロの長時間労働を取り締まることはできません。高プロは「過労死合法化」であり、「ブラック企業合法化」でもあるのです。

 企業が労働基準法を違反してでも「残業代ゼロ」で「働かせ放題」にすることは、労働基準監督署が毎年発表している「監督指導による賃金不払残業の是正結果」を見れば明らかです。直近の2016年度で、労働基準法違反による賃金不払残業の是正企業数は1,349企業、支払われた割増賃金合計額127億2,327万円にも上るのです。労働基準監督署に取り締まられてやっと労働基準法を渋々守る企業が、高プロ導入の半年後に1回だけ報告する「健康確保措置」をきちんと守る企業ばかりだと考える方がどうかしているでしょう。

 こんな高プロがもたらすものは地獄絵図ですが、いくつか簡単なバナーをつくってみました。

 まず、高プロで企業ができようになることです。

 高プロの「健康確保措置」として法案で「1年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えること」としているのですが、これでは4週間の最初にまとめて4日の休日を与えれば、残りの24日間は休日も休憩も与えずに1日24時間働かせることが可能です。さらに続く4週間について最後にまとめて4日の休日を与えれば48日間連続して1日24時間働かせることが可能になり、連続1,152時間の労働を強制することも合法になります。

 




 高プロは、年104日の休日(祝日除く週平均2日)と有給休暇5日付与すれば、あとは休憩なしの24時間労働が合法になります。365日-104日-5日=256日。256日×24時間=年6,144時間が合法になり、これは現在のフルタイム労働者の年2,025時間の3倍以上です。(※厚生労働省「毎月勤労統計調査」の一般労働者の2017年の年間実労働時間)

 



 高プロには、労働者の裁量性は一切ありません。労働者は企業の指揮命令に完全に服することになります。休日も始業時間も終業時間も所定労働時間も残業も企業が何の規制もなく自由に一方的に決めることができます。

 



 それから、高プロは「実は年収357万円くらいの労働者にも、やりようによっては適用できちゃう」ことを佐々木亮弁護士がYahoo!ニュース「高プロ制度は地獄の入り口 ~ High-pro systm is the gate to hell~」で指摘しています。

 



 それでは次に、こうした高プロでどうなるでしょうか? これについてもいくつかのバナーをつくってみました。

 高プロは現在のフルタイム労働者の3倍以上の年6,144時間が合法になりますから、ただでさえ長時間労働が増えている日本でさらに長時間労働が激増することになります。

 



 そして、史上最高を更新中の過労死・過労自殺で命と健康を奪われる労働者がさらに激増することになります。とりわけ、高プロは労働者に裁量性が一切なく他律性のなか企業の指揮命令に完全に服することから過労による精神障害、過労自殺はさらに激増することになります。


 

 今でも日本の男性の労働時間はフランスの2倍以上で、男性の家事労働時間は世界一短いのですが、高プロの長時間労働激増によって、家事労働時間はさらに短くなります。家事労働時間を確保できないということは家族責任を果たすことができないということですから必然的に子育ても困難になり少子化を招くことになります。安倍首相は少子化を「国難」と言っていますが、その「国難」をさらに深刻化させようとしているのは安倍政権です。

 



 「第1の8時間は仕事のために、第2の8時間は休息のために、そして残りの8時間は俺たちの好きなことのために」を目標にメーデーは行われてきたのですが、長時間労働が蔓延している日本では8時間の睡眠を確保できず、OECD平均の睡眠時間8時間25分より1時間以上も少ない7時間22分です。今よりさらに長時間労働を激増させる高プロが導入されると今でも世界でいちばん短い睡眠時間がさらに短くなってしまいます。

 



 日本は睡眠時間も確保できないので当然ですが余暇時間も確保できていません。そもそも消費する時間も確保できないのです。他律的な長時間労働でクリエイティブな仕事ができないことも自明で日本の産業競争力もさらに低下することになりますが、一方で消費者でもある労働者に睡眠時間も家事労働時間も消費する時間もないとなるとGDPの6割を占める個人消費が落ち込み、日本経済がさらに疲弊することになります。

 



 安倍首相が言う少子化という「国難」をさらに深刻化させ、日本経済を一層疲弊させることになる高度プロフェッショナル制度は今すぐ廃案にする必要があります高度プロフェッショナル制度の廃案を求める署名にぜひご協力ください。【→★#高度プロフェッショナル制度 は現代の奴隷制!今すぐ廃案に!

 

(井上伸)


「365日24時間、死ぬまで働け」とするワタミ渡邉美樹氏の存在からわかる高プロ地獄絵図の現実性

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 前回の記事「高度プロフェッショナル制度がもたらす地獄絵図=48日間連続の休憩なし24時間労働が合法」に対して、「そんな企業は存在しない」「あり得ない空想で高プロを批判しても意味がない」との指摘をいただきました。本当にそうでしょうか?

 父親を過労自殺でなくしたマーくん(当時小学校1年生)が書いた詩「ぼくの夢」が全国過労死を考える家族の会のサイトに掲載されています。バナーもつくってみました。

 

ぼくの夢

大きくなったら
ぼくは博士になりたい
そしてドラえもんに出てくるような
タイムマシンをつくる
ぼくはタイムマシーンにのって
お父さんの死んでしまう
まえの日に行く
そして『仕事に行ったらあかん』て
いうんや



 

 過労自死した高橋まつりさん(電通社員)の母親の幸美さんも、31歳で過労死した佐戸未和さん(NHK記者)の母親の佐戸恵美子さんも、過労死遺族は自分たちと同じ思いを二度とすることのないよう過労死を根絶して欲しいと願っています。

 しかし、現在の日本では、過労死で毎日1人以上の命が奪われているというのが厳然たる事実です。今こうしている間にも日本では労働者が過労死で命を奪われているのです。労働時間規制がきちんとあっても守らない企業が1,349企業も1年間だけで存在していることは前回の記事でも紹介しました。

 それから、象徴的な存在はワタミです。ワタミグループ創業者で自民党の渡邉美樹参院議員が、今年3月13日の参院予算委員会の公聴会で過労死遺族に暴言を述べたことは記憶に新しいですが、あらためてワタミの渡邉美樹氏の言動を思い出してみてください。

▼渡邉美樹氏の言動

 

◆365日24時間、死ぬまで働け。10年後も20年後もこの言葉が飛び交うワタミでありたい。

(※出典:「ワタミ社内文書入手 渡辺美樹会長が『365日24時間死ぬまで働け』 週刊文春 2013年6月5日号より)

 

◆よく「それは無理です」って最近の若い人達は言いますけど、たとえ無理なことだろうと、鼻血を出そうがブッ倒れようが、無理矢理にでも一週間やらせれば、それは無理じゃなくなるんです。そこでやめてしまうから「無理」になってしまうんです。全力で走らせて、それを一週間続けさせれば、それは「無理」じゃなくなるんです。

(※出典:2006年5月22日テレビ東京放送「日経スペシャル カンブリア宮殿~村上龍の経済トークライブ」および【村上龍RVR龍言飛語】vol.252 ワタミ従業員自殺に労災認定より)

 

 どうでしょうか? 「そんな企業は存在しない」「あり得ない空想で高プロを批判しても意味がない」との指摘ですが、労働時間規制がある今現在でもワタミ渡邉美樹氏のような経営者は存在しているのです。労働時間規制があっても「365日24時間、死ぬまで働け」と言うワタミ渡邉美樹氏が実際に存在しているのに、労働時間規制がなくなって「48日間連続して1日24時間働かせる」ことが合法になる高プロができた途端に「そんな企業は存在しない」となる方がじつは「あり得ない空想」だということがよくわかるのではないでしょうか?

 「365日24時間、死ぬまで働け」とするワタミが労働時間規制があっても存在するのに、労働時間規制がなくなる高プロで合法になる「48日間連続して24時間、死ぬまで働け」を実行しない企業があらわれないわけがないというのが結論です。高度プロフェッショナル制度の廃案を求める署名にぜひご協力ください。【→★#高度プロフェッショナル制度 は現代の奴隷制!今すぐ廃案に!

(井上伸)

#高度プロフェッショナル制度 は過労死激増に加え家族の命を奪われた遺族に深刻なダメージを与える

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 私たちの仲間、全経済産業省労働組合副委員長の飯塚盛康さんが、政府・与党が明日にも衆議院で強行採決しようとしている働き方改革法案(過労死促進となる高度プロフェッショナル制度を含む)と、過労死・過労自死に直面している家族の問題に関わって書いてくれましたので紹介します。

 政府・与党が過労死を促進する高度プロフェッショナル制度を含む働き方改革法案を衆議院で強行採決しようとするなか、過労死家族の訴えを聞いてください。

 今現在、家族や自分自身が過労死の問題に直面していない皆さんでも、高度プロフェッショナル制度ができてしまうと、過労死の危険性は確実に高まってしまいます。「KAROSHI」を国際語にしてしまった日本において、それをなくしていくどころか、安倍政権の下でさらに過労死を増やし、過労死遺族を増やそうとしているのです。

 過労死の問題に今は直面していない皆さんもぜひ想像する力をはたらかせてください。

 家族が過労死・過労自死した遺族は以下のような思いをします。

(1)突然、家族が過労死・過労自死した。
(2)長時間労働をしていたが、それが原因だろうかと思う。
(3)会社を辞めてもいいと言えなかった自分を責め、うつ状態になる。
(4)うつ状態から、少し抜け出ると家族がどんな働き方をしていたかを知りたくなる。
(5)会社の人に聞くと、残業が多かった、日勤や夜勤などの不規則勤務だった、パワハラ、セクハラがあったなどと言われる。
(6)労災申請をすれば、詳細がわかるのではないかと思い、会社に労災申請を申し入れる。
(7)会社は残業も多くない、パワハラもないといい労災申請を拒否する。←多くの人がここで諦める。
(8)仕方がないので専門家の力を借りて労災申請をする。
(9)会社は「残業は多かったが、仕事はしていなかった」「裁量労働あるいは管理職だから働く時間は自分で決められたので自分で勝手に長時間働いていた」「パワハラはなかった。指導の範囲だ」と主張する。
(10)労災認定されず。←ここでも多くの人が諦める。
(11)行政裁判では会社側は「あることないこと」ではなく「ないことないこと」(例:残業時間中に3時間食事をしていた。借金や失恋など全く別の出来事を苦にして自死したのでないか。親の教育が悪いから精神的に弱かったのだ)を主張する。

 このように、家族を過労死・過労自死で奪われた遺族は大変な精神的苦痛を味わいます。

 遺族が妻と子どものケースになると、母親がこのような精神的苦痛を味わえば、当然のように子どもにも精神的な影響がさまざまな形で出ます。

 過労死・過労自死を引き起こすということは、本人だけでなく家族まで不幸の連鎖が続くということです。

 高度プロフェッショナル制度が導入されれば、このような思いをする人が「確実」に増えると同時に、今より一層深刻な事態になります。

 今現在も過労死・過労自死における労災認定は困難ですが、労働時間規制から除外される高度プロフェッショナル制度においては、そもそも企業側に労働時間の把握義務がなくなるので、過労死しても過労死の労災認定が今よりさらに困難になります。そうすると、過労死認定がされず、労災も受けられず、泣き寝入りし、路頭に迷う遺族が今よりさらに増えることになります。

 高度プロフェッショナル制度になれば、実際に過労死が必ず増えるのに、過労死しても過労死と認定されることが今より一層困難になるので、遺族にとっては地獄のような生活になります。高度プロフェッショナル制度は家族の命を奪われた遺族にとっても深刻なダメージを与えるものなのです。

 政治とは「国民を幸福にすることであり、最低限不幸にしないこと」ではないでしょうか。

 今の政治はその逆のことをしています。

 昨夜(5月22日)日比谷野外音楽堂で行われた高度プロフェッショナル制度の廃案を求める集会での「全国過労死を考える家族の会」代表世話人・寺西笑子さんの訴えと、「全国過労死を考える家族の会」のサイトに掲載されている、父親を過労自殺でなくしたマーくん(当時小学校1年生)が書いた詩「ぼくの夢」を最後に紹介します。みなさん、想像力をはたらかせてください。高度プロフェッショナル制度の廃案を求める署名にぜひご協力ください。【→★#高度プロフェッショナル制度 は現代の奴隷制!今すぐ廃案に!

▼「全国過労死を考える家族の会」代表世話人・寺西笑子さんの訴え
 働く人が懸命の末に命まで奪われていいはずがありません。国は命を守るための法律を作るべきなのに、逆に命を奪う法律=高度プロフェッショナル制度を作ろうとしています。強行採決という暴挙は許してはなりません。明日も官邸前の座り込みを実行します。過労死のない社会をともに築くよう、皆さん応援をお願いします。(写真は集会で訴える寺西笑子さんら「全国過労死を考える家族の会」)



▼父親を過労自殺でなくしたマーくん(当時小学校1年生)が書いた詩「ぼくの夢」

働き方改革 #高度プロフェッショナル制度 は女性差別助長し子育て介護抱えた男性を低賃金に追いやる

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 昨夜(5月23日)、エキタス東海が名古屋駅前で「高度プロフェッショナル制度導入反対抗議行動」(写真)を実施しました。この抗議行動で発言した蓑輪明子さんから了承を得たスピーチ原稿を紹介させていただきます。



 みなさん、こんばんは。私は、名城大学経済学部で教員をしております、蓑輪明子と申します。今日は、いま国会で審議中の働き方改革の危険性についてお話ししたいと思います。

 働き方改革法案について、安倍政権は多様な働き方を作り出し、育児や介護と仕事の両立ができるように改革する、多様な人が働きやすくなれば、日本経済が発展すると言っています。

 いま国会に出ている法案は、はたして、そのような理想的な社会を作り出すでしょうか? 私はそうは思いません。

 この法案には、高度プロフェッショナル制度が盛り込まれています。コンサルタントなど、高度な職種の高所得者について、労働時間の規制を外すというものです。政府は高度プロフェッショナル制度が導入される職について、成果と時間が連動しないと言っています。これを聞けば、短い時間でも稼げる仕事かのように受け取れます。

 しかし、本当にそうでしょうか?

 若い人たちに聞くと、この政府の説明に誰一人、納得していません。結局、ブラックで、定額で好き放題働かされるだろうし、過労死だって出るに違いない。そのうち、もっと低い給料の人にも適用されるに違いないと感じています。

 私もそう思います。弱い立場に立つ、雇われた人たちは高度プロフェッショナルとはいえ、際限ない労働に駆り立てられるのです。

 私たち、研究者も裁量労働など、事実上、労働時間規制のない働きかたをしています。でも、授業、学生対応、事務、研究など、山積みの仕事の中で、8時間で仕事が終われる日など、ほとんどありません。朝から夜までは学生対応や授業。それが終われば授業準備や事務。夜中や早朝に研究をやっています。私も昨日は深夜2時まで、朝は4時から研究でした。

 私だけではありません。同世代の研究者も同じです。「過労死しないで」というのが別れる時にかけあう言葉です。

 私たちは裁量ある労働者とはいえ、次から次に大学改革、学生サービス、研究業績を求められているからです。きっと高度プロフェッショナル制度もそうなるに違いありません。

 でも政府はこう言うでしょう。断ることができるよと。そんなこと、できるわけありません。競争に負けるからです。労働時間が長くなるのを拒否して、競争に負けたら、より低い待遇の仕事が待っています。大学では今、教員の半数が非常勤です。私も40歳まで非常勤でしたが、年収は100万円ほどでした。そういう生活に再び戻りたくはありません。

 高度プロフェッショナル制度をはじめとする労働時間規制緩和は、過労死をもたらし、人の命を奪うと言われています。ほんとうにそうだと思います。ただ、私はそれだけでなく、生き残って働く人たちに差別をもたらすと思っています。

 いまの働き方改革は、高度プロフェッショナルのように、長く働けばそれなりに、短く働く人はそこそこに、という労働時間による処遇格差を正当化するものだと思います。

 長時間働くことが当たり前になっていけば、長く残業をすることができない、子育てや親の介護を抱えた人たち、特に女性は必ず低賃金労働に追いやられ、時に仕事を辞めなくてはならなくなる、そして、それが正当化されることになります。

 実際、労働時間規制が事実上ない私たち研究者の中でも、子育て中のお母さんは仕事と家庭の両立が見通せず、苦労してついた正規研究者を辞める人もいます。今年の春も同世代が一人、大学を去り、非正規になりました。でも、そういう働きかたを選んだのはその人だ、自己責任だとされるのです。

 働き方改革法案では、残業の規制を強めるためにも、残業に月45時間、特別な時には月100時間というふうに残業時間の上限を決めて、規制を強めると言っています。でも、100時間って、長すぎませんか?

 私は女性の労働が研究テーマですけれど、調査をすると、労働者のみなさんは月20時間の残業でもしんどい、つらい、家庭との両立が難しい、仕事を辞めたいとお答えになります。本当に女性が活躍する、多様性を生み出す必要があるならば、8時間働いて普通に帰れる、そういう働きかたを当たり前にする必要があるんじゃないでしょうか。

 いまの働き方改革では、女性たちは絶対に差別されます。子育てや介護する男性も同じです。

 働き方改革の強行採決は絶対に許されません。日本に過労死と働きすぎと差別をもたらすものです。この社会に生きるすべての人の未来に関係する問題です。まだ時間はあります。仮に衆議院で強行採決されても参議院での審議があります。その間に、この法案の危険なところを一人でも多くの人に伝えて、強行採決を止めていきましょう。

日大アメフト問題の内田正人前監督が人事責任者として推進する「非常勤講師3600人雇い止め計画」

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 TBS NEWSの報道の一部です。

 日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題で、新たな証言です。去年、日大アメフト部では20人ほどが退部しましたが、その一部の背景には、コーチによる暴力問題があったと関係者が、JNNの取材に答えました。
 「コーチに殴られて、耳の神経がまひして、しびれが出てきちゃって」(当時を知る関係者)
 こう話すのは、当時を知る関係者です。去年、日大アメフト部では、「コーチによる暴力問題が起きていた」とJNNの取材に明らかにしました。
 「コーチが暴力を振るったというふうに聞いてます。部内では手を出すといえば、このコーチというのが暗黙の了解というところがあったようです」(当時を知る関係者)
 そうした暴力が始まったのは、内田正人前監督が監督に就任した直後のことだったといいます。日大アメフト部は、おととし、チームが4位に低迷したため、内田前監督が再度就任。

Q.おととしまでチームの状態が悪かった?
 「年が明けて監督が急に(内田前監督に)代わりました。コーチたちが選手に寄り添うというよりは、監督の顔色を伺うような感じになったようです」(当時を知る関係者)
 この関係者によりますと、コーチに殴られけがをした選手は病院に連れて行かれましたが、「練習による脳しんとう」と部内向けには説明され、暴力行為は表沙汰にはならなかったというのです。去年1月以降、日大アメフト部からおよそ20人が次々に退部。一部は暴力問題が原因だったといいます。
 「日常的に暴力・パワハラがあり、コーチらに逆らえない状態だった」
TBS NEWS 28日16時42分


 上記の報道を見るだけでも、内田正人前監督が諸悪の根源であることがよくわかります。そして、内田前監督は日大アメフト問題だけでなく日大当局による非常勤講師の大量雇い止め問題の責任者でもあるのです。この日大の非常勤講師大量雇い止め問題について5月25日、首都圏大学非常勤講師組合が厚生労働省で記者会見を行い、内田氏の日大役職の辞任を求めています。

 記者会見での首都圏大学非常勤講師組合の話によると、内田正人前監督は日大・田中英壽理事長の側近といわれ、2014年に日大の「理事・人事部長」に、昨年2017年9月からは日大の「人事部長」兼任の「人事担当常務理事」に就任し、そして、内田氏が「人事担当常務理事」になった途端、「非常勤講師切り」が始まったとのことです。

 実際、2017年10月、日大の危機管理学部、スポーツ科学部で教えていた英語の非常勤講師15人が突然雇い止め通告を行いました。雇い止めの理由として、日大は授業を外部業者に委託することをあげていますが、文部科学省ですら、大学が授業に責任をもつために「実際に教育にあたる教員」は直接雇用すべきだという原則を示し、外部委託や業務請負に歯止めをかけています。ところが、日大はウェストゲート社という外部業者に英語の授業を丸投げし、ウェストゲート社の講師が授業、採点を行うという計画で、これは偽装請負(違法行為)にあたります。

 さらに、日大は総授業数の2割を削減し、専任教員の担当授業を6割増加させることで、非常勤講師3,600人を雇い止めにする「日大非常勤講師ゼロ化計画」を推進しています。

 2018年2月に日大は、「契約更新上限を4回」とする非常勤講師5年雇い止めを規定した非常勤講師就業規則を突如作成しました。労働契約法が保障する無期契約への転換は雇用の安定をはかるもので、この間、労働組合の運動によって東京大学や理化学研究所、海洋研究開発機構などで雇い止め撤回が勝ち取られていますが、日大は英語非常勤講師を一方的に雇い止めにするだけでなく脱法的な就業規則まで作成しているのです。

 英語非常勤講師15人の突然の雇い止め、外部委託業者の偽装請負、脱法的な就業規則、非常勤講師3,600人の雇い止め計画、これらすべての方針決定と実施・施行の権限を持ち、最も重い責任を有するのが内田正人常務理事兼人事部長なのです。

 首都圏非常勤講師組合は記者会見で要旨次のように告発しています。

首都圏大学非常勤講師組合・日大ユニオン(準備会)は、昨年来、非常勤講師の大量雇い止めに対し、数度の団体交渉でその撤回を求めてきました。しかしこれまでの団体交渉において、直接の責任者である内田正人常務理事兼人事部長は一度も出席せず、事務方や代理人弁護士に交渉を丸投げしています。しかも日大側はその場では何も答えず、「検討する」と持ち帰った事案は全面拒否という、不誠実団交を平然と続けてきました。典型的な不当労働行為です。非常勤講師の大量雇い止めと今回のアメフト事件における利己的な自己都合優先=ルール無視の姿勢は、日大執行部の不健全な体質に由来するものでしょう。内田常務理事と田中理事長が日大における強権を維持し上意下達の大学運営を続ける限り、今回のアメフト事件の事実解明・責任追及も不可能であり、再発防止も困難です。日大の高等教育研究の再生をはかるため、当組合は、5月21日付で日大に対し「緊急要求申入書」を送付し、その中で、これら諸問題の責任者である、田中英壽理事長の理事・理事長職の辞職、内田正人常任理事の解任・解職、理事会および経営陣すべての退陣、事務方責任者の更迭を求めました」

 

(井上伸)

竹中平蔵パソナ会長が派遣法と同様に高度プロフェッショナル制度を小さく産んで大きく育てる必要性力説

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 昨夜(5月30日)放送されたNHKクローズアップ現代「議論白熱! 働き方改革法案~最大の焦点“高プロ制度”の行方~」で竹中平蔵パソナ会長が経団連と安倍政権の代弁者として奮闘していました。(※竹中平蔵パソナ会長は、現在の安倍政権において、産業競争力会議議員と国家戦略特区会議有識者議員もつとめています)

 竹中平蔵パソナ会長は、番組内で「高度プロフェッショナル制度を入れないと日本経済の明日はない」、「高度プロフェッショナル制度を適用する人が1%ではなくて、もっともっと増えていかないと日本経済は強くなっていかない」と明言しました。

 この竹中平蔵パソナ会長の発言は、経団連が十数年来主張してきたことと全く同じです。経団連は今から13年前の2005年6月21日に「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」を発表しています。(※ホワイトカラーエグゼンプションというのは今の高度プロフェッショナル制度のことです)

 この提言の中で経団連は、「賃金要件」を「当該年における年収の額が400万円(又は全労働者の平均給与所得)以上であること。」と明記しています。

 また、2015年4月6日、経団連の榊原定征会長は記者会見で、高度プロフェッショナル制度は「年収要件の緩和や職種を広げる形にしないといけない」と述べ、対象拡大を求めています。

 そして、この経団連・榊原会長の発言について、2015年4月20日、当時厚生労働大臣だった塩崎恭久氏が、日本経済研究センターの会員会社・社長約100人が集まった朝食会において、「経団連が早速1,075万円を下げるんだと言ったもんだから、まああれでまた質問がむちゃくちゃきましたよ」、「それはちょっとぐっと我慢していただいてですね、まあとりあえず通すことだといって、合意をしてくれると大変ありがたい」、「小さく産んで大きく育てる」ことが必要だと発言しているのです。

 経団連も安倍政権も高度プロフェッショナル制度を「小さく産んで大きく育てる」ことをずっと狙ってきていて、それを昨夜、竹中平蔵パソナ会長があらためて代弁したということです。とてもわかりやすい話です。

 それから、竹中平蔵パソナ会長は昨夜の番組内で、「『全ての規制をはずす』という議論が横行していますけど、企業にすごい厳しい規制が課される。これだけ休みを取りなさいと休みを強制する」、「労働時間で規制するのではなく、休日をしっかり取るという規制をし、義務付ける」、「年間104日、4週間で4日以上の休日は企業にとって非常に厳しい規制だ」などと述べました。

 そして、高度プロフェッショナル制度に反対する立場から、全国過労死を考える家族の会代表の寺西笑子さんの「高度プロフェッショナル制度は、定額働かせ放題で過労死になっても使用者が責任も取らないひどい状態になってしまう。これ以上、過労死を増やさないでください。死人を増やさないでください。悲しい遺族をつくらないでください」という訴えや、上西充子法政大学教授の「高度プロフェッショナル制度で『柔軟な働き方ができる』というのは間違ったうたい文句です。労働時間の規制というのは使用者を縛るものなので、それをはずしてしまう高度プロフェッショナル制度は、使用者側が『柔軟な働かせ方ができる』ことになり、労働者からすると労働時間が自由になるわけでは全くなくて、使用者からの『この時間働け』という命令だけが残って、労働者は『柔軟な働き方ができず』、むしろ裁量労働制よりも厳しい働き方を強いられることになります」「事後的なチェックをすればいいという話がありますが、これは命と健康の問題で、労働時間の規制をはずせば歯止めがなくなります。高度プロフェッショナル制度で労働者から『これは違法だ』と言えなくなるし、労働基準監督署も入れなくなります」との指摘、棗一郎弁護士の「健康確保措置は極めて不十分で労働者の健康を守れない。4週で4日休ませるということだが、固めて4日休ませれば、後は24時間24日働けというのも合法になり、ブラック企業も利用しかねません。労働者に裁量はなく自分で時間を決めて帰れる権限も付与されていない。どうやって労働者の健康を守れるのか? この高度プロフェッショナル制度は根本的に間違っている」などの指摘がありました。

 高度プロフェッショナル制度法案で「1年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えること」としているのですが、これでは4週間の最初にまとめて4日の休日を与えれば、残りの24日間は休日も休憩も与えずに1日24時間働かせることが可能です。さらに続く4週間について最後にまとめて4日の休日を与えれば48日間連続して1日24時間働かせることが可能になり、連続1,152時間の労働を強制することも合法になります。



 「こんな極端な働かせ方をする企業はない」などと指摘してくる方がいらっしゃいますが、根本的な問題は「こんな極端な働かせ方が合法になってしまう高度プロフェッショナル制度など存在してはいけない」ということです。そして、「365日24時間、死ぬまで働け」とするワタミ渡邉美樹氏の存在からわかる高プロ地獄絵図の現実性という以前の記事で紹介した通り、「365日24時間、死ぬまで働け」とするブラック企業が今でも存在するのにこれが合法になってしまったら今よりもっとブラック企業が増えることは明らかでしょう。

 高度プロフェッショナル制度で「24時間、死ぬまで働け」が現実のものとなろうとするなか、昨夜の番組内で竹中平蔵パソナ会長は、「あれをやっても不安、これをやっても不安では、日本が沈んでしまう」などと述べました。「高度プロフェッショナル制度には過労死の危険がある」と声を上げること自体をやみくもに不安をあおっているかのように批判するもので、過労死の問題などはなから軽視していることがよくわかる発言だと思いました。そして、高度プロフェッショナル制度の導入によって「過労死も労働者の自己責任」とされる前から、過労死の問題で声をあげること自体を封殺するような竹中平蔵パソナ会長の態度も今回の高度プロフェッショナル制度の本質をあらわすものだと思いました。

 今回の「働き方改革一括法案」は、安倍首相が「1年余り前、入社1年目の女性が、長時間労働による過酷な状況の中、自ら命を絶ちました。御冥福を改めてお祈りするとともに、二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意で、長時間労働の是正に取り組みます。」(2017年1月20日施政方針演説)として、過労死をなくすために必要だと言っていました。しかし、昨夜の竹中平蔵パソナ会長の発言で、過労死をなくすどころか過労死を増やすことについても問題視すらせず、高度プロフェッショナル制度を「小さく産んで大きく育てる」ために「働き方改革一括法案」を成立させて、高度プロフェッショナル制度で働く労働者をもっともっと増やしていくことに狙いがあることが、あらためてよくわかりました。

 竹中平蔵パソナ会長は、小渕内閣の経済戦略会議委員のとき労働者派遣の原則自由化を提唱し、小泉内閣の経済財政担当相だった2003年には製造業にまで派遣対象業種を拡大した改正派遣法を成立させ、パソナはじめ人材派遣業界の収益を拡大させました。こうした雇用破壊は、2008年12月31日から2009年1月5日まで年越し派遣村が取り組まれることなどによって、貧困と格差の拡大が可視化されることにも至りました。それにもかかわらず、竹中平蔵パソナ会長は、2012年11月30日に東洋経済ONLINEで、若者には「貧しくなる自由がある」、「貧しさをエンジョイしたらいい」などと言ってのけています。今回の高度プロフェッショナル制度を入れて拡大しないと日本が沈むなどと言う竹中平蔵パソナ会長は、労働者に対して「高度プロフェッショナル制度で過労死になる自由もあるし、高度プロフェッショナル制度がイヤなら貧しくなる自由もある」と滅茶苦茶なことを言っているようなものだと私は思います。


参考
◆派遣労働者の生き血吸う竹中平蔵氏の「朝まで生テレビ!」発言に垣間見る本音=トリクルダウン(一種の所得再分配効果)は「人のもの強奪する」「集団的たかり」だからあり得ない、格差社会で「貧しさエンジョイしたらいい」
 

◆「世界で一番派遣会社パソナが活躍しやすい国」へ竹中平蔵氏肝いり派遣法改悪-若者は「貧しさをエンジョイしたらいい」(竹中氏)、皆フリーターにし「オーディション型雇用」で「人材派遣が日本の基幹産業に」(南部パソナ代表)
 

◆派遣労働者から強奪し「改革利権」「究極の天下り」「学商の独り勝ち」の竹中平蔵パソナ会長言説=辛い思いする人、痛みこうむる人がいる格差社会こそ経済にプラス、社会保障は集団的なたかり
 

(井上伸)

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